【Windows 11】DirectX 12 Ultimateの新機能と活用法

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Windows 11では、DirectX 12 Ultimateが標準搭載され、ゲームやグラフィックス処理において新たな進化をもたらしています。
今回は、DirectX 12 Ultimateの新機能と、Windows 11でこれらの機能を活用する方法について解説します。
レイトレーシングやメッシュシェーダーなど、次世代グラフィックス技術の仕組みやバージョン確認方法など、Windows 11ユーザーが知っておきたい情報を紹介します。

DirectX 12 Ultimateとは

DirectX 12 Ultimateは、MicrosoftがWindows 11およびXbox Series Xのために開発した次世代グラフィックスAPIです。従来のDirectX 12の機能を拡張し、よりリアルで没入感のあるゲーム体験を提供するための新技術が統合されています。PCとゲーム機のグラフィックスプラットフォームを統一することで、開発者の負担を軽減し、クロスプラットフォームでの開発を容易にする狙いもあります。

Windows 11とDirectX 12 Ultimateの関係

Windows 11は、DirectX 12 Ultimateを標準でサポートする最初のWindowsオペレーティングシステムです。Windows 10でもバージョン2004(May 2020 Update)以降でDirectX 12 Ultimateの機能を利用できますが、Windows 11ではより最適化された形で実装されています。Windows 11のグラフィックスドライバーやシステム構成は、DirectX 12 Ultimateの機能を活用できるように設計されており、特にゲーミングパフォーマンスの向上に寄与しています。

DirectX 12とDirectX 12 Ultimateの違い

DirectX 12 UltimateはDirectX 12の拡張版であり、基本的な機能や互換性はそのままに、新しい機能が追加されています。主な違いは、DirectX Raytracing(DXR)のバージョン1.1への更新、メッシュシェーダー、可変レートシェーディング、サンプラーフィードバックなどの新機能が標準化され、一括して利用できる点です。DirectX 12 Ultimateは、これらの次世代グラフィックス機能をまとめて対応しているかどうかを確認できる「機能レベル12_2」として実装されています。

DirectX 12 Ultimateの主要新機能

DirectX 12 Ultimateには、次世代のグラフィックス処理を可能にする4つの主要な新機能が実装されています。これらの機能は、ゲームにおけるビジュアル品質とパフォーマンスの両方を向上させる可能性を秘めています。

DirectX Raytracing 1.1

DirectX Raytracing(DXR)は、リアルタイムでのレイトレーシング処理を可能にする技術で、バージョン1.1では効率性と柔軟性が向上しています。レイトレーシングとは、光の反射や屈折をシミュレートすることで、より自然で写実的な影、反射、グローバルイルミネーションを実現する技術です。

DXR 1.1では、GPUワーククリエーションでのレイトレーシングが可能になり、シェーダーがCPUに介入することなく直接レイトレーシングを呼び出せるようになりました。これにより、シェーダーベースのカリング(不要な処理の削減)や並べ替え、分類などの適応型レイトレーシングが効率的に実行できます。また、インラインレイトレーシングのサポートにより、開発者がレイトレーシングプロセスをより柔軟に制御できるようになっています。

メッシュシェーダー

メッシュシェーダーは、従来の頂点処理パイプラインを刷新する技術で、3Dオブジェクトの表示方法を根本から変革します。従来の頂点シェーダー、ハルシェーダー、ドメインシェーダー、ジオメトリシェーダーといった複雑なパイプラインを、タスクシェーダーとメッシュシェーダーの2段階に簡素化しています。

この技術の最大のメリットは、複雑な3Dシーン(特にオープンワールドゲームなど)での描画効率の向上です。GPUが細部の表現レベルを自動的かつインテリジェントに選択し、オブジェクトのテセレーション(分割)を制御することで、CPUの負荷を軽減します。これにより、多数の3Dオブジェクトが存在する広大な世界でも、スムーズなフレームレートを維持できるようになります。

可変レートシェーディング

可変レートシェーディング(Variable Rate Shading:VRS)は、画面上の各部分に対して異なるシェーディング処理を適用する技術です。ユーザーが注目する部分や動きの激しい部分は高品質に描画し、周辺視野や背景などの重要度が低い部分は低い解像度で処理することで、全体的なパフォーマンスを向上させます。

VRSは人間の視覚特性を利用した技術で、見た目の品質をほとんど犠牲にすることなく、GPUの処理負荷を削減できます。例えば、高速で移動するオブジェクトの周辺や、暗い部分、フォーカスが合っていない背景などは、人間の目には詳細が認識しづらいため、処理を簡略化しても視覚的な違和感は少なくなります。

サンプラーフィードバック

サンプラーフィードバックは、テクスチャサンプリングの効率を向上させる技術です。ゲームエンジンがテクスチャサンプラーの使用状況を追跡し、フィードバックを得ることで、必要な部分のみテクスチャを読み込んだり、テクスチャの品質を最適化したりすることができます。

この技術により、テクスチャストリーミングがより効率的になり、高解像度テクスチャの使用時でもメモリ使用量を削減し、ロード時間を短縮することが可能になります。また、テクスチャの詳細度を動的に調整することで、ビジュアル品質を維持しながらパフォーマンスを向上させることができます。特に大規模なオープンワールドゲームでは、シームレスな世界表現とロード時間の短縮に貢献します。

DirectX 12 Ultimateのシステム要件

システム要件

DirectX 12 Ultimateを利用するためのシステム要件は以下の通りです:

  • オペレーティングシステム:Windows 10 バージョン2004(May 2020 Update)以降、またはWindows 11
  • グラフィックスカード:DirectX 12 Ultimate対応GPU
  • グラフィックスドライバー:WDDM(Windows Display Driver Model)2.0以上に対応したドライバー
  • ディスプレイ:720p(HD:1280×720ピクセル)以上、8bit(256色)以上表示可能なディスプレイ

Windows 11のシステム要件には、すでにDirectX 12対応GPUが含まれているため、Windows 11が正常に動作するPCであれば、基本的なDirectX 12機能は利用できます。ただし、DirectX 12 Ultimateの全機能を活用するには、対応するGPUが必要です。

Windows 11でDirectX 12 Ultimateを活用する方法

Windows 11でDirectX 12 Ultimateの機能を活用するためには、まず現在のDirectXバージョンを確認し、必要に応じて最新バージョンにアップデートする必要があります。

DirectXのバージョン確認方法

Windows 11にインストールされているDirectXのバージョンを確認するには、以下の手順に従います:

  1. キーボードの「Windows」キー+「R」キーを同時に押して、「ファイル名を指定して実行」ダイアログを開きます。
  2. 「dxdiag」と入力して「OK」をクリックします。
  3. DirectX診断ツールが起動します。「システム」タブを選択します。
  4. 「システム情報」セクションの「DirectX バージョン」の項目で、現在インストールされているDirectXのバージョンを確認できます。

注意点として、DirectX 12 Ultimateがインストールされていても、DirectX診断ツールでは「DirectX 12」と表示される場合があります。DirectX 12 Ultimateの機能が利用可能かどうかは、グラフィックスカードの対応状況と、Windows 11のバージョンで判断する必要があります。

より詳細な情報を確認するには、「ディスプレイ」タブを選択し、「機能レベル」の項目を確認します。「12_2」が表示されていれば、DirectX 12 Ultimateの機能が利用可能です。

最新バージョンへのアップデート方法

Windows 11でDirectXを最新バージョンに更新するには、Windows Updateを利用します。DirectXのスタンドアロンパッケージは提供されておらず、すべての更新はWindows Update経由で配信されます。

  1. 「スタート」メニューから「設定」を開きます。
  2. 「Windows Update」を選択します。
  3. 「更新プログラムのチェック」をクリックして、利用可能な更新プログラムを確認します。
  4. 更新プログラムが見つかった場合は、「ダウンロードしてインストール」をクリックして更新を適用します。
  5. 更新が完了したら、PCを再起動します。

また、グラフィックスカードのドライバーも最新バージョンに更新することで、DirectX 12 Ultimateの機能をより効果的に利用できるようになります。グラフィックスカードメーカー(NVIDIA、AMD、Intelなど)の公式サイトから最新ドライバーをダウンロードしてインストールするか、以下の手順でデバイスマネージャーからアップデートできます:

  1. キーボードの「Windows」キー+「X」キーを同時に押し、表示されるメニューから「デバイスマネージャー」を選択します。
  2. 「ディスプレイアダプター」を展開します。
  3. グラフィックスカードを右クリックし、「ドライバーの更新」を選択します。
  4. 「ドライバーを自動的に検索」を選択して、最新ドライバーを検索・インストールします。

まとめ

Windows 11に標準搭載されたDirectX 12 Ultimateは、ゲームやグラフィックス処理に革新をもたらす次世代技術です。
レイトレーシング、メッシュシェーダー、可変レートシェーディング、サンプラーフィードバックといった新機能により、より美しく、よりスムーズなゲーム体験が可能になっています。