Windows 11を利用してインターネット上のWebサイトを閲覧している際、意図せずに新しい小さなウィンドウ(ポップアップ)が次々と表示され、操作を妨げられる経験はないでしょうか。これらは単なる広告である場合も多いですが、中には「システムが破損しています」といった偽の警告を表示してユーザーの不安を煽り、不正なソフトウェアをインストールさせようとする悪質なものも存在します。
安全かつ快適にインターネットを利用するためには、ブラウザの「ポップアップブロック」機能を適切に管理することが不可欠です。Windows 11の標準ブラウザであるMicrosoft Edgeや、広く利用されているGoogle Chromeには、強力なブロック機能が標準で搭載されています。
今回は、Windows 11環境における主要ブラウザでのポップアップブロック設定の確認・有効化の手順と、業務システムや学習サイトなどでポップアップが必要な場合に特定のサイトのみを許可する解除方法について解説します。また、設定を行っても改善されない場合のトラブルシューティングについても網羅的に紹介します。
ポップアップブロックとは?その必要性と効果
設定手順に入る前に、なぜポップアップブロックが必要なのか、その仕組みと効果について整理します。
ポップアップの仕組みと種類
ポップアップとは、Webページを開いた際やリンクをクリックした際に、最前面に自動的に表示される別のウィンドウのことです。本来は、ログイン画面や用語の補足説明など、ユーザーの利便性を高めるために設計された機能でした。しかし、現在ではその特性を悪用し、強制的に広告を見せたり、ユーザーの意図しないページへ誘導したりする手段として使われるケースが増えています。
ブロック機能を利用するメリット
- セキュリティリスクの低減:フィッシング詐欺サイトや、マルウェア配布サイトへの強制的なリダイレクト(転送)を防ぐことができます。特に、Windowsのシステム警告を模した偽のポップアップ(テクニカルサポート詐欺)への接触機会を減らす効果があります。
- ブラウジングの効率化:記事を読んでいる最中に視界を遮るウィンドウが表示されなくなるため、集中して情報を収集できます。また、不要なウィンドウを開かないことで、メモリやCPUなどのPCリソースの消費を抑え、ブラウザの動作を軽快に保つことにもつながります。
Microsoft Edgeでの設定手順
Windows 11に標準搭載されているMicrosoft Edgeは、OSとの親和性が高く、セキュリティ機能も充実しています。デフォルトでポップアップブロックは有効になっているはずですが、意図せず無効になっている場合もあるため、以下の手順で確認してください。
ポップアップブロックの状態確認と有効化
- Microsoft Edgeを起動し、画面右上の「…」(設定など)アイコンをクリックします。
- 表示されたメニューの下部にある「設定」を選択します。
- 設定画面の左側に表示されるメニューから「プライバシー/検索/サービス」をクリックします。(画面幅が狭い場合は、左上の「≡」メニューボタンから選択します)
- 右側の「サイトのアクセス許可」をクリックします。
- 右側の「すべてのアクセス許可」をクリックします。
- 右側の「すべてのアクセス許可」画面を下にスクロールし、「ポップアップとリダイレクト」をクリックします。
- 一番上にある「ブロック済み(推奨)」という項目のスイッチを確認します。これがオン(青色)になっていれば、ブロック機能は有効です。もしオフ(白色)になっている場合は、スイッチをクリックしてオンに切り替えます。
これで、Edgeにおける基本的な防御設定は完了です。
特定のサイトのみブロックを解除する(例外設定)
銀行のオンラインバンキング、eラーニングシステム、確定申告作成コーナーなどの一部のWebサービスでは、操作の過程でポップアップウィンドウを使用することがあります。これらのサイトを利用する際は、ブロック機能を一時的に無効にするか、そのサイトだけを「許可リスト」に追加する必要があります。
- 先ほどの「ポップアップとリダイレクト」設定画面を開きます。
- 「ポップアップの送信とリダイレクトの使用を許可しました」というセクションにある「サイトの追加」ボタンをクリックします。
- 「サイトの追加」というダイアログボックスが表示されます。
- ここに、ポップアップを許可したいサイトのURL(アドレス)を入力します。
- 例:
https://www.example.com
- 例:
- 「追加」ボタンをクリックします。
リストにサイトが追加されたことを確認してください。これにより、他のサイトのポップアップはブロックしつつ、必要なサイトのウィンドウだけは正常に開くようになります。不要になった場合は、リストの横にある「…」メニューから削除できます。
Google Chromeでの設定手順
Google Chromeも強力なポップアップブロック機能を備えています。
ポップアップブロックの有効化
- Google Chromeを起動し、画面右上の「︙」(Google Chromeの設定)アイコンをクリックします。
- メニューから「設定」を選択します。
- 左側の設定メニューから「プライバシーとセキュリティ」をクリックします。
- 右側の表示領域から「サイトの設定」を選択します。
- 画面を下にスクロールし、「コンテンツ」セクションにある「ポップアップとリダイレクト」をクリックします。
- 「デフォルトの動作」という項目で、「サイトにポップアップの送信やリダイレクトの使用を許可しない」というラジオボタンを選択します。これが推奨設定です。
特定のサイトのみ許可する手順
Edgeと同様に、信頼できる特定のサイトでのみポップアップを許可設定します。
- 「ポップアップとリダイレクト」の設定画面を下にスクロールします。
- 「ポップアップの送信やリダイレクトの使用を許可するサイト」という項目の右側にある「追加」ボタンをクリックします。
- 「サイトの追加」画面が表示されるので、許可したいサイトのURLを入力します。
- 「追加」をクリックして保存します。
これで、指定したサイトのみ制限が解除されます。
「ポップアップ」と「通知」の違いに注意
よくある相談に、「デスクトップ画面の右下に次々と広告が出てくるのを止めたい」というものがありますが、これはブラウザの「ポップアップ」ではなく、「Webプッシュ通知」である可能性が高いです。
ポップアップ: 画面の中央などに新しいウィンドウとして開くもの。
通知: 画面の右下(タスクトレイ付近)にスライドして出てくるメッセージカード。
もし、今回紹介したポップアップブロック設定を行っても「右下の広告」が消えない場合は、以下の手順で「通知」の設定を確認してください。
- Edgeの場合: 「設定」>「プライバシー/検索/サービス」>「サイトのアクセス許可」>「すべてのアクセス許可」>「通知」を開き、「通知の送信が許可されています」に見覚えのないサイトがないか確認し、あれば削除またはブロックします。
- Chromeの場合: 「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「サイトの設定」>「通知」から同様に確認します。
設定してもポップアップが消えない場合の対処法
ブラウザの標準設定を正しく行っても、依然としてポップアップ広告が表示される場合、いくつかの外部要因が疑われます。
1. 拡張機能(アドオン)の干渉
ブラウザに追加した拡張機能自体が、広告を表示させる原因になっていることがあります。特に、無料の動画ダウンローダーや、出所の不明確なクーポン系アプリなどが原因となるケースが見られます。
対処法: ブラウザの拡張機能管理画面を開き、最近インストールしたものや、使っていない機能を一つずつ「無効」にして、現象が収まるか確認してください。
2. アドウェア・マルウェアの感染
ブラウザだけでなく、Windowsのシステム自体に「アドウェア」と呼ばれる広告表示プログラムが入り込んでいる可能性があります。これは通常のブラウザ設定では防ぐことができません。
対処法: Windows 11標準のセキュリティ機能でスキャンを行います。
- スタートボタンを右クリックし、「設定」を開きます。
- 「プライバシーとセキュリティ」をクリックし、「Windows セキュリティ」を選択します。
- 「ウイルスと脅威の防止」を開き、「クイック スキャン」(または「スキャンのオプション」から「フル スキャン」)を実行します。
3. ブラウザの設定リセット
設定が複雑になりすぎて原因が特定できない場合、ブラウザを初期状態に戻すことが有効な解決策になります。ただし、Cookieや拡張機能の設定も消去されるため、最終手段として検討してください。
まとめ
Windows 11でのWebブラウジングにおいて、ポップアップブロックは安全性を守るための「盾」のような存在です。Microsoft EdgeやGoogle Chromeの標準機能を正しく設定することで、煩わしい広告や悪質な誘導から身を守ることができます。
重要なのは、「基本はブロック、必要に応じて許可」という運用ルールです。全てのポップアップを無条件に許可してしまうと、セキュリティリスクが高まります。今回解説した手順を参考に、ご自身の利用環境に合わせた最適な設定を行ってください。
もし、設定後も不審なウィンドウが表示される場合は、通知設定の見直しやウイルススキャンを実施し、PCの健康状態を確認することをお勧めします。