今回はは、MacでWindows 11を使用する方法と、そのメリット・デメリットについて解説します。
以前のIntel搭載のMacではAppleの「Boot Camp」を使ってWindowsを直接インストールすることができましたが、AppleがM1、M2などの独自チップ(Appleシリコン)に移行したことで状況が変わりました。
現在は仮想化ソフトウェアを使ってMac上でWindows 11を動かすことが可能です。
※Appleシリコン搭載Mac(M1、M2、M3など)では、仮想化ソフトウェアを使って、ARM版Windows 11を動かすことができます。Parallels Desktop 20 for MacではARM版Windows 11だけでなく、実験的にx86版Windows 11を動かせるようですが、x86版Windows 11のパフォーマンスは低いようです。
MacでWindows 11を使う方法
現在、MacでWindows 11を使用する主な方法は以下の3つです。
- Parallels Desktop(仮想化ソフトウェア)- Microsoft公認のソリューション
- VMware Fusion(仮想化ソフトウェア)- 個人利用は無料で利用可能
- UTM(無料の仮想化ソフトウェア)- オープンソースのQEMUベース
今回は最も人気があり、Microsoftに正式に認定されている「Parallels Desktop」を使った方法を中心に解説します。
※Parallels Desktop for Mac のシステム要件
Parallels DesktopでWindows 11を使う
Parallels Desktopは、Mac上でWindowsなど他のOSを仮想マシンとして実行できるソフトウェアです。MacとWindowsを再起動なしで切り替えたり、同時に使用したりすることができるツールです。2023年にはMicrosoftからAppleシリコンMac上でのWindows 11実行の公式認定ソリューションとなりました。
Parallels Desktopのインストール
まずは、Parallels Desktopをインストールする必要があります。
- Parallels Desktopの公式サイト(https://www.parallels.com/jp/products/desktop/)にアクセスします。
- 「今すぐ購入」または「無償トライアル」(14日間の無料試用版)をクリックします。(→Amazonで購入する場合)
- ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールを完了します。
Windows 11のインストール
Parallels Desktopのインストールが完了したら、Windows 11をインストールします。最新バージョンのParallels Desktopでは、Windows 11のダウンロードからインストールまでほぼ自動で行えるようになっています。
- Parallels Desktopを起動します。
- 初回起動時に表示される画面で「Windowsのインストール」をクリックします。
- Parallels DesktopがWindows 11のダウンロードを自動で開始します。
- ダウンロードが完了すると、Windows 11のインストールが自動的に進みます。
- Windows 11の初期設定(言語やキーボード配列の選択など)を行います。
- 設定が完了すると、Mac上でWindows 11が使用できるようになります。
ライセンス認証について
Windows 11をインストールしただけでは、評価版として30日間しか使用できません。継続して使用するためには、Windows 11のライセンスを購入して認証する必要があります。
Windows 11のライセンスは、Microsoft公式サイトやAmazonなどで購入できます。Appleシリコン搭載Macの場合は、ARM版Windows 11 ProまたはEnterpriseのライセンスが必要です。購入したライセンスキーは、Windows 11の「設定」→「システム」→「ライセンス認証」から入力できます。
Intel搭載MacとAppleシリコン搭載Macでの違い
MacでWindows 11を使用する際、Intel搭載MacとAppleシリコン搭載Mac(M1、M2、M3など)では、いくつかの重要な違いがあります。
Intel搭載Macの場合
- 通常の64ビットx86版Windows 11をインストールできます。
- Windowsアプリケーションとの互換性が高く、ほとんどのWindows用ソフトウェアが動作します。
- Boot Campを使用して、MacとWindowsをデュアルブート(起動時にOSを選択)することもできます。
Appleシリコン搭載Macの場合
- ARM版Windows 11(Windows 11 ProまたはEnterprise)のみ公式にサポートされています。
- x86/x64向けWindowsアプリはエミュレーションで実行できますが、完全な動作保証はありません。
- Boot Campは使用できず、仮想化ソフトウェアを使う必要があります。
- DirectX 11.1とOpenGL 3.3までの対応であり、DirectX 12を必要とする最新ゲームなどは動作しません。
- 2025年1月のParallels Desktop 20.2アップデートでx86版Windows 10/11の実験的サポートが追加されましたが、起動に2〜7分かかるといった情報もあるなど、非常に低速のようです。
Parallels Desktopの便利な機能
Parallels DesktopにはMac上でWindowsを使うための様々な機能が搭載されています。
表示モード
Parallels Desktopには4つの表示モードがあります。
- フルスクリーンモード:Mac画面いっぱいにWindowsのデスクトップを表示します。MacをWindows PCのように使用できます。
- ウィンドウモード:MacのデスクトップにWindowsをウィンドウとして表示します。MacとWindowsを切り替えやすく、データの受け渡しがしやすくなります。
- Coherence(コヒーレンス)モード:Windowsのデスクトップを隠し、WindowsアプリをMacのアプリのように表示・使用できます。OSの違いを意識せずに済みます。
- ピクチャ・イン・ピクチャモード:Windowsのデスクトップを小さなサムネイルとして表示します。必要に応じてクリックして拡大できます。
MacとWindows間のシームレスな連携
- ファイルやフォルダの共有が可能
- テキストや画像のコピー&ペーストが可能
- ドラッグ&ドロップでファイルを移動可能
- MacのプリンタやUSBデバイスをWindowsから使用可能
VMware Fusionの無料利用
2023年11月にBroadcomがVMwareを買収した後、2024年5月からVMware Fusion Proが個人利用向けに無料で提供されるようになりました。2024年11月からは、商用、教育、個人利用のいずれも無料でWindows 11を実行できます。Parallelsほど統合機能は豊富ではありませんが、基本的な仮想化機能は利用可能です。
UTMの特徴
UTMは無料のオープンソース仮想化ツールで、QEMUをベースにしています。インターフェースがシンプルで使いやすいですが、Windows向けのグラフィック性能はParallelsやVMwareより制限されており、ゲームなどには不向きです。基本的なタスクや開発環境として使用する場合に適しています。
MacでWindows 11を使うメリット
MacでWindows 11を使用することには、以下のようなメリットがあります。
- Macのハードウェアとデザインを活かしながら、Windows専用のソフトウェアも利用できる
- OSを切り替えるために別のパソコンを用意する必要がない
- 再起動せずにMacとWindowsを同時に使用できる(仮想化ソフトウェア使用時)
- MacとWindows間でファイルやデータを共有できる
- Windows用のビジネスソフトやゲームなど、Mac版がないアプリケーションも使用可能
MacでWindows 11を使う際のデメリット
一方で、MacでWindows 11を使用する際には以下のようなデメリットも存在します。
- 一部の仮想化ソフトウェアの購入費用がかかる(Parallels Desktopは年間サブスクリプションまたは買い切り)
- Windows 11のライセンス費用も別途必要
- 仮想化によるパフォーマンスの低下(特に高負荷のアプリケーションやゲーム)
- Appleシリコン搭載MacではARM版Windows 11しか実用的に使えず、一部アプリが動作しない可能性がある
- Mac本体のストレージ容量を消費する(Windows 11に最低16GB以上必要)
Appleシリコン搭載MacでのWindows 11使用時の制限事項
Appleシリコン搭載Mac(M1、M2、M3など)でWindows 11を使用する際、特に注意が必要な制限事項があります。
- ARM版Windows 11でしか実用的に動作しないため、x86アーキテクチャ向けのWindowsドライバが使えない
- DirectX 11.1とOpenGL 3.3までしか対応していないため、DirectX 12や最新のOpenGLを使用するゲームやアプリは動作しない
- ネストされた仮想化機能(Windows Subsystem for Android(2025年3月5日にMicrosoftがサポートを終了)、Windows Subsystem for Linux、Windows Sandbox)は利用できない
- 一部のVPNクライアント、プリンタドライバ、スキャナドライバが利用できない
- 一部のアンチチートソフトウェア(VanguardやEasyAntiCheat)を使用するオンラインゲームが動作しない
- 32ビットARM版Windowsアプリはサポートされていない(64ビットARMアプリのみ対応)
ただし、通常のオフィスアプリケーションや一般的なソフトウェアの多くは問題なく動作します。また、ウェブブラウジングやメール、動画視聴といった基本的な作業は快適に行えます。
まとめ
MacでWindows 11を使用することは、適切なツールを使えば比較的簡単です。特にParallels DesktopはMicrosoft公認のソリューションとして、MacとWindowsの両方の利点を活かして作業することができます。VMware Fusionが個人利用向けに無料となり、UTMという無料選択肢もあるため、用途に応じて選択できるようになりました。
Intel搭載MacとAppleシリコン搭載Macでは使用できるWindowsのバージョンや互換性が異なるため、自分のMacに合った方法を選ぶ必要があります。また、仮想化によるパフォーマンスの低下や、一部のアプリケーションやゲームに対する制限も考慮すべき点です。